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大衆演劇用語集


や行


・山(やま)

恩人の危機を救うために、やむにやまれず悪党達を叩っ斬り、道中合羽に三度笠の股旅やくざは、後追いする娘をふりきって、再び旅に出る――こうして芝居がクライマックスを迎えると、花道に立った主人公は、七五調の台詞を朗々と吐きながら、大仰な見得をきる。この大衆演劇特有の、思い入れたっぷりな台詞まわしや所作を、“山をあげる”もしくは“モートルをあげる”という。「目をむき、鼻を開いて、お客さんの拍手を奪い取る」と、旅役者達が自負するように、これは、熱と力の演技術に違いない。観客を十分に堪能させるための、サービス精神が強く働いているのだろう。だが一方で、強烈に山をあげる演技は、芝居の妙味に欠け、鼻につく“くさい芝居”と軽蔑されてきた。つまり、大衆演劇=くさい演技だ、と。しかし実際、下手な役者には、絶対にくさい芝居ができないのも、また事実である。


・山台(やまだい)

大道具。土手などに用いる木製の台。基本的に、高さは常足(1.4尺)、中足(2.1尺)、高足(2.8尺)のいずれかで、大きさは3尺×3尺か3尺×6尺。主に使われるのは常足の山台。3尺×9尺に組んで開帳場と蹴込みを付けて土手や橋の袂として使う。ちなみに、山台に限らず白碌や二重など、舞台で高さのあるものは全て7寸の倍数の高さで製作する。1段が7寸というのが日本人にとって一番上りやすいらしい。


・山遠見(やまどおみ)

山中の描かれた遠見。舞台を山道に見立て、手前には木々や草むら、遠方には連なる山々が描かれている。


・遊里(ゆうり)

同遊廓。


・遊廓(ゆうかく)

多数の遊女屋が集まっている地域。遊里、廓ともいう。江戸の吉原、京都の島原、大阪の新町の遊廓が日本三郭と呼ばれ、劇中でも遊廓といえばそのいずれかであることが多い。


・雪遠見(ゆきどおみ)

雪景色を描いた遠見。冬の田園風景。


・雪布(ゆきぬの)

白い地絣。雪の場で用いる。


・吉原幕(よしわらまく)

遊廓の街並みを描いた背景幕。無論遊廓の場で用いる。


・寄場(よせば)

人足寄場の略。放免された罪人や、無宿者を収容して労役させた所。


・夜鷹(よたか)

特定の女郎屋などに属せず、路傍で客をとり、荒屋や橋の下で商売をする下級の遊女。


・夜鳴蕎麦(よなきそば)

夜半、通りに簡易な屋台を出して売られる蕎麦。夜鳴うどんもある。劇中では決まって15文で売られ、「ときそば」のネタとなる。


・予備柝(よびき)

一の柝の直前に2回連続でチョンチョン、と打つ。名称は「呼び柝」からの転か。


・与力(よりき)

同心を束ねる者。役職としては藩によってまちまちであったようだが、基本的には奉行の下で警察を司っていた。


ページの一部を、「旧 三吉演芸場HP」より引用
ページの一部を、「三吉演芸場だより」に特別寄稿された大衆演劇評論家、橋本正樹さんの文章より引用
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