大衆演劇用語集
か行
・開帳場(かいちょうば)
山台からのスロープ。八百屋、とも呼ぶ。
・掛け行灯(かけあんどん)
大道具。店の木戸口に掛ける直方体の行灯。店名を書き記しておく。
・掛け金(かけきん)
小売店が後払いで問屋から商品を受け取った時の、後払いの金のこと。
・掛け取り(かけとり)
問屋が小売店から掛け金を受け取ること。また、受け取りに行くこと。
・陰腹(かげばら)
あえて不義理を為すとき、自らへのけじめに、あらかじめ腹を突き、それを押し隠して臨むこと。
・駕籠舁(かごかき)
駕籠をかつぐ人夫、及び職業。駕籠屋。
・貸元(かしもと)
やくざの親分。元は金を融通する賭場の親分を指していたが、転じてばくち打ちの親分、つまりやくざの親分となった。
・仇役(かたきやく)
主人公と敵対する悪役。敵役とも。
・貨幣(かへい)
時代背景によって異なる。江戸時代、小判大判の単位は、16朱=4分=1両である。金製の小判以下の貨幣は銀などの貴金属の粒なので、劇中では小銭、ではなく小粒、となる。価値としては「1両盗れば島送り、5両盗れば打ち首」という決まり文句がある。 同じく江戸時代、貨幣の単位は1000文(銭)=1貫。貨幣というより一文銭の単位か。夜鳴き蕎麦が一杯15文であったという。明治になると100銭=1円となり、紙幣も出てくるようになる。
・上手(かみて)
客席から舞台に向かって右手。東側ともいう。基本的に、芝居中のかけ合いでは、立場や身分が上の役が上手で演ずることになる。
・川町(かわまち)
川のある町並みの場。通常、川町幕を吊り、舞台上を通りに見立て、石燈籠や柳等を置く。水路が整備されている町であるから、江戸、大阪の町として使われることが多い。
・川町幕(かわまちまく)
背景幕。川町の場を描いたもの。手前から、舞台に繋がる通り、川、商屋の並ぶ対岸の通り、と描かれている。
・貫(かん)
①重さの単位。「度量衡」参照。
②通貨の単位。「貨幣」参照。
・柝(き)
拍子木を打つこと。木とも書く。以下のような時に打ち鳴らす。
・きざみ
開演などで緞帳が上がるとき、および、終演などで緞帳が下りるときに打つ。連続して打ち、次第に拍子を上げていく。
・気っ張り(きっぱり)
見得と同義。気っ張るといえば、見得を切ることである。
・木戸(きど)
①劇場の入り口。観劇料を払う受付け。
②大道具。屋内と屋外、庭と通りなどを明確にする。通常、客席から木戸の裏手の役者が見えるように、格子戸となっている。
・木戸銭(きどせん)
劇場の入場料金。
・侠客(きょうかく)
やくざのことだが、舞台ではやくざの屋敷を指すことが多い。
・兇状(きょうじょう)
犯罪のこと。劇中では人殺しであることが多い。兇状旅とは、時効まで旅に出て逃げることであり、兇状わらじを履く、といえば兇状旅に出ることである。兇状旅の期間はまちまちのようだが、三年三ヶ月が目安であるらしい。
・脇息(きょうそく)
大道具。座った時に肘を掛けるもの。武家の身分の高い者などが用いる。
・切り株(きりかぶ)
大道具。野原や山中の場で、役者が腰掛けるのに使う。
・切餅(きりもち)
一分銀100枚、すなわち25両を方形に紙に包んで封じたもの。形が切餅に似ている。
・斤(きん)
重さの単位。「度量衡」参照。
・薬(くすり)
5角に折った紙包みが、白なら薬で、赤なら毒。
・口立て稽古
大衆演劇の芝居には、台本がない。こう書くと誰もが驚くに違いない。どう頭をひねっても、台本のない芝居づくりなど考えられない。ところが口立てという、旅役者独特の、信じがたい稽古があるのだ。昼夜興行の常打ち小屋の場合だと、昼と夜の部の間の休憩時間か、終演後に、全座員が舞台か楽屋に集合し、演出の座長を中心に車座になる。座員達の手にはノートかテープレコーダー。まず配役が決められ、氏名、年齢、職業、性格の確認。それから座長は、登場人物の台詞、仕草はもとより、上、下手の出入りを、照明係、音響係(役者が兼ねる)への指示も出しながら、猛スピードで喋る。これを受けて座員はノートに走り書きしたりして、約二十分で稽古は終了。これだけで翌日か、早ければ二時間後に舞台にかけるのである。この特異な口立ては、読み書きができなかった江戸時代の歌舞伎役者の名残だという。
・廓(くるわ)
遊女屋の集まっている所。遊郭。
・黒幕(くろまく)
舞台上では「黒=存在しないもの」であるから、見切れ幕として使われる。背景幕として使う時は「夜」を表す。
・景(けい)
芝居の場面の事。場と同義。
・劇団幕(げきだんまく)
劇団の名や座長の名が大書きされた飾り幕。舞台間口に合う4m×6m程の大きさで、ショウの時などに舞台奥に吊る。大概は贔屓からの贈り物である。
・蹴込み(けこみ)
山台の前面を隠す木製パネル。草むらや石垣等が描かれている。
・外題(げだい)
お客さんに告知する芝居の題名。原作のある芝居でも、劇団の芸風によって内容が変わるので、内容に則した題名を外題として告知する。もともとは本の表紙に記す題名の事で、それと区別するために「芸題」と書く事もある。最近ではあまり意識してこだわっている劇団を見ないが、古くは忌み字や字数が奇数になるのを嫌っていたようだ。
・間(けん)
長さの単位。「度量衡」参照。
・合(ごう)
容積の単位。「度量衡」参照。
・口上挨拶(こうじょうあいさつ)
芝居も舞踊・歌謡ショウも日替りでプログラムを組む常打ち小屋での、翌日の演目の予告は、大衆演劇ならではの、口上という方法がとられている。多くの一座は、芝居が終演し、ショウの準備にかかる休憩時間に行う。形式は様々だが、集約すると・・・・・。どどん、どんどんと太鼓が響き、「とざい、東西」の掛け声とともに、座長あるいは花形幹部が幕前に進み出て正座する。まずは「一段高い舞台より失礼とは存じますが、心は皆様の下座にくだりまして、」と来場への謝辞に始まり、今終わったばかりの舞台への感想を聞きながら、頃合を見計らって、翌日の演目の披露にはいる。その内容がいかに素晴らしいかを簡潔にしかも面白おかしく聞かせるのがコツで、「長口上は時間の妨げ、」とことわって挨拶を終える。この口上が、一事が万事で、一生懸命にやる一座は、たくさんの観客を集めている。
・香盤(こうばん)
①全ての役者のショウでの演目や、芝居での役を記したもの。プログラム。
②観客座席表のこと。
・蓙(ござ)
い草で編んだむしろ。白洲において訴人や罪人が座るのに用いたり、刀等を包むのに用いる。
・小粒(こつぶ)
小銭のこと。「貨幣」参照。
・子役(こやく)
大衆演劇の人気の大半を支えるのはもちろん座長だが、その人気を時として食ってしまう強力なライバルが一座にいる。ただ舞台に立つだけで、拍手と祝儀をかっさらう子役である。子役とは、一般的に五歳から十二歳までの児童俳優を指すが、大衆演劇の場合、おしめのとれない幼児が舞台に立つことも珍しくない。主に座長の子供が、芝居や舞踊、歌謡ショウに否応なしにかりだされるわけだ。どの一座でも、涙をしぼりとる人情劇はドル箱的存在で、その芝居に達者な子役がいるかいないかが観客動員数を左右する。昔はとくに、名子役を“米ビツ”とよんで大事にしたという。小学生になると就学証明書を持って転校を繰り返し、「役者の子」といじめられる悲哀を味わう。これは今も昔もかわらない。(注:いじめとまでいかずとも、特別視されてしまうのは仕方がないようだ。by jin)現在大活躍している座長の大半は、“腹の中からの役者”で、子役あがりである。
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- ページの一部を、「旧 三吉演芸場HP」より引用
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- ページの一部を、「三吉演芸場だより」に特別寄稿された大衆演劇評論家、橋本正樹さんの文章より引用
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