大衆演劇用語集
あ行
・揚幕(あげまく)
花道の突き当たりの垂れ幕。現在、多くの劇場では揚幕でなく引幕なのだが昔からの呼び名が定着している。劇場の紋が染め抜かれている。
・揚屋(あげや)
遊廓で、置屋から女郎を呼んで遊興するところ。
・浅葱幕(あさぎまく)
定式幕の内側の浅葱色の幕。本来ならば「昼」を表す幕だが、定式幕を閉めずに舞台転換をするときや、口上挨拶のときにも用いる。三吉演芸場の場合中割り幕となっているが、振り落としや吊りの劇場もあるようだ。
・あたり箱(あたりばこ)
硯箱の忌詞。舞台では硯箱は「擦る」に通ずる忌詞とされ、あたり箱と呼ばれる。
・行灯(あんどん)
大道具。木枠の色を、料亭なら赤、侠客、座敷なら黒、世話なら木目と使い分ける。
・衣桁(いこう)
着物を掛ける家具。形は鳥居に似、高さは150cm程。えこう、あるいは衣紋掛とも呼ぶ。芝居中では花嫁衣装を掛けるのに用いられたり、呉服屋の店先を表すのに用いられる。
・板付き(いたつき)
幕開きのときに、舞台にいること。板付きの役者、板付きで始まる、等。
・一の柝(いちのき)
各場の終盤に役者が大見得を切るときに1回チョン、と打つ。芝居の展開によっては、この柝で暗転、明転することになる。打つ強さは芝居によって変り、怒りの見得などでは強く、悲哀の見得では弱く、見得のはっきりしないない笑劇などでは二の柝の直前に極弱めに打つことになる。
・打ち首獄門(うちくびごくもん)
斬首のうえさらし首にする刑罰。
・縁起棚(えんぎだな)
大道具。芸人、芸娼、侠客の家などに用いる。縁起を祝うために家内に設けられた神棚。
・花魁(おいらん)
遊郭において上位の女郎。
・大入り(おおいり)
お客さんが一定数以上入ること。劇場によって大入りの人数は異なる。三吉の場合は100人で大入り、200人でダブルの大入り、となる。また、大入りのときは手打ちを行う。
・大入り袋(おおいりぶくろ)
大入りの際に、劇場から劇団員に、劇団から劇場関係者に渡されるご祝儀。中身は5円から500円と幅があるようだが、基本的には100円である。
・大黒幕(おおぐろまく)
舞台奥、ホリゾント幕のすぐ前の黒幕。基本的に「夜」を表す。
・岡引き(おかひき)
町同心の手先として罪人の探索、捕縛にあたった者。おかっぴき。
・置屋(おきや)
芸娼妓を抱えておき、揚屋や茶屋の注文に応じて派遣する店。
・贈り幕(おくりまく)
贔屓から贈られた幕。役者の名や劇団の名が大書きされた舞台間口の飾り幕のこと。
・御薦(おこも)
乞食のこと。
・落間(おちま)
大道具。土間用の壁パネル。二重と併用する。
・女形
昭和四十年代にはどん底にあえいでいた大衆演劇界が、急速に注目されるようになったいくつかの要因の一つに、梅沢富美男に代表される、女形芸があった。男が女を、もしくは女が男を演じる形式は、虚と実をおりなす芝居の世界では、古くから確立されていた。男まさりの壮烈な立ち回りで一世を風靡した女剣劇、宝塚の“男形”がそうであり、その逆の、歌舞伎の女形は多くの人々を魅了してきた。その歌舞伎から派生してきた大衆演劇だから、変身の極みというべき女形を演じて、不思議はない。旅役者はどんな役柄でもこなすことをモットーにしているが、実際、女形を演じるのは大変みたいだ。化粧は入念となり、着付けも結構時間をくう。かつら、衣装類も立役の倍くらい費用がかさむ。しかし彼らは、観客が一番喜び、また鮮烈にアピールできる女形芸を絶対になおざりにはしないのだ。
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- ページの一部を、「旧 三吉演芸場HP」より引用
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- ページの一部を、「三吉演芸場だより」に特別寄稿された大衆演劇評論家、橋本正樹さんの文章より引用
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